あがり症(緊張症)に効く糖質制限
こうした緊張症についてオーソモレキュラー栄養療法としては、糖質制限をおすすめします。緊張というのは、つまり、交感神経と副交感神経のアンバランスが原因です。そして、そのアンバランスは食事に起因することが多いのです。
砂糖が含まれた食品はもちろん、ご飯、パン、麺などの炭水化物を摂取すると、体内でグルコースに分解され血糖値を上げます。炭水化物の中でも精製糖質由来のもは血糖値を急激に上昇させてしまうため、これを下げるために膵臓からインスリンが大量に分泌されます。すると血糖値が下がりすぎてしまい反応性低血糖をきたします。そのため今度はグルカゴン、コルチゾール(副腎皮質ホルモン)、アドレナリン(副腎髄質ホルモン)など、交感神経を興奮させるホルモンが分泌されます。こうしたジェットコースターのような血糖値スパイクがイライラしたり緊張したりという精神症状を誘発するのです。
ただ、解決策はとても簡単で、血糖値の乱高下を招くような食品をとらなければ良いだけです。このことを説明すると、患者さんご自身に思い当たるふしがあったようで、
なるほど、とても参考になりました。
糖質を完全にカットする必要はない
人体の仕組みを理解することで、解決方法に対してより意識的になることができます。意識が高まれば、その方法はもっと洗練されていきます。この患者さんの場合は、お昼ご飯を抜くと緊張しないということは経験的に分かっていました。そして、より具体的に、糖質のInputが停止したことが奏功したのだということを理解すると、野菜やタンパク質は食べても良く、完全に断食する必要はないという本質に近くことができます。
ただ、食事には盲点がけっこう多いのでご用心ください。
「炭水化物はダメだけど野菜はOK。ならば、タンパク質を食べよう」と思って、お昼に外食でトンカツを注文するとどうなるでしょうか。野菜にはブドウ糖果糖液糖たっぷりのドレッシング、トンカツには小麦粉やパン粉という炭水化物で覆われた豚肉に糖質たっぷりのソースがかかっていて…、という具合に予想以上に糖質を摂ってしまうはずですから、その点はお気をつけください。
患者さんの目の前に神様が突然現れて、
と言われたら、こういう人ちたちはきっと二つ返事で「YES!」と言うはずです。緊張症のせいでどれほど自分の人生が傷つけられてきたことか、彼らは身に染みて知っているからです。糖質制限だけで症状が軽快するというのなら、喜んで我慢することでしょう。
真の治療法は、デパスやメイラックスの中にあるのではなく、もっと手近なところにあるものです。オーソモレキュラー栄養療法はそれを如実に教えてくれます。