ナイアシン(ビタミンB3)の効果
今回は、過去にも何度が取り上げたナイアシン(ビタミンB3)についてです。ナイアシンは体内において、500種類もの補酵素として機能していると言われているとても重要な微量栄養素の一つです。主な働きには、エネルギー代謝、皮膚の炎症防止、神経症状の抑制などがあります。そして、ナイアシンが不足すると、鬱、精神障害、皮膚炎、口内炎、胃腸障害、下痢、ペラグラなどを発症することがあります。
先日、スタッフさんから、このような喜びの声をもらいました。彼女は持病があるというわけでもないのですが、うちのクリニックで働くようになってからナイアシンのことを知り、試しに自分でも飲み始めてみたようでした。
文献や論文から知識を得ることも大事ですが、何よりもこういう生の声に接することが一番参考になります。
ナイアシン(ビタミンB3)の摂取量
だけど、結論から言うと、この軽度上昇を恐れてナイアシンを忌避するとすれば、それはまったくナンセンスだと思います。心配ないですよ。飲みつづけてみてください。ご自身で効果を実感しているなら、なおさらですね。
糖質過剰だった食生活を見直す時期だったので、適量糖質高タンパク質食へのスムーズな移行にも寄与してくれました。コレステロールのコントロールにおいてはHDL(善玉コレステロール)を増加させます。2018年7月21日に58だった数値が、3ヶ月後の10月20日は81まで上昇しました。また、ナイアシンは乳酸をピルビン酸へ戻す可逆反応を触媒する乳酸脱水素酵素(LDH)の働きをサポートするので乳酸蓄積による慢性疲労がなくなったように感じます。個人的には、この疲労感の軽減が一番嬉しい変化です。
ナイアシンの肝臓への影響については、すでに十分な研究が行われています。ここでオーソモレキュラー栄養療法の第一人者、ホッファーの論文を引用し、彼がナイアシンの肝臓への影響についてどのように考えていたのか紹介しましょう。
肝機能検査に対するナイアシンの影響
ナイアシンやナイアシンアミド(徐放型ナイアシン)は、メチル基と結合します。つまり、体内で数少ないメチル基受容体として働いているのです。したがって、このビタミンB3の大量投与によってメチル基欠乏が起こるというのは筋の通った話です。
そして、もう一つ主要なメチル基受容体としてはノルアドレナリンが挙げられます。ノルアドレナリンがメチル化するとアドレナリンになります。ナイアシン投与でメチル基欠乏を起こし、その結果ノルアドレナリンからアドレナリンの産生を抑えることにつながり、アドレノクロム(催幻覚物質)の産生を減らし、統合失調症の改善につなげたいと考えていました。
しかし、その一方でナイアシンの投与によって脂肪肝を生じる可能性も懸念していました。それは、1942年に動物実験でナイアシンが肝臓にダメージを与えるという報告があったからです。そこで、アルトシュールがこの動物実験を実際にやってみました。その結果、肝毒性は見られませんでした。組織学的に調べても、化学的に調べても、肝臓は全く正常でした。
そして、ナイアシンによる治療を受けた患者さんに一連の検査をおこないましが、肝臓へのダメージは存在しませんでした。ごく稀に、閉塞性黄疸を生じる患者さんがいました。そういうときは、黄疸が軽快するまでナイアシンの投与を中止しました。ある患者さんは、ナイアシンの摂取を中止したために精神症状がぶり返してしまいました。そこで、ナイアシンの投与を再開しましたが、それ以降は再び黄疸が生じることはありませんでした。黄疸が生じることは極めて稀であり、この20年の間、私は一例も見ていません。
しかし、肝機能検査を行うと、ナイアシンやナイアシンアミドを服用している患者の一部で、数値の上昇が見られることがあります。ほとんどのドクターがこれを見て「肝障害が進んでいるからナイアシンは危険だ」と考えました。パーソンズもそのように懸念していたドクターの一人でしたが、長らく研究と観察を続けた結果、最終的には「肝数値の上昇は、肝病変があることを意味しない」という結論に至りました。
彼の結論は、「ナイアシンに肝毒性はない」というものでした。1966年から1974年に行われたthe Coronary Drug Projectの結果を見て、彼の考えは確信に変わりました。この研究は、ナイアシンを服用する1,100人を5年から8年追跡したものです。主席研究員のポール・カナーは、パーソンズに「ナイアシンに起因する異常は見られなかった」と語りました。
そして、パーソンズは以下のように結論づけました。
「肝数値は、上限値の2倍から3倍を超えているときにのみ肝臓の異常を示している。肝機能を反映する酵素の軽度上昇は、ナイアシン治療の正常な反応であり、この数値をもって治療を中断する理由にはならない。上昇した肝数値は、ナイアシンを継続して摂取しつづけていても正常値に戻るものだが、ナイアシンアミド(徐放型)を服用している場合は、肝数値の上昇はさらに大きくなる傾向がある」私は、肝炎を罹患している患者に対しては、ナイアシンを高用量で投与しません。その理由は、それが有害だからではなく、もし何かが起こった場合にナイアシンのせいにされることが分かっているからです。
徐放型ナイアシン(ナイアシンアミド、フラッシュフリーナイアシン)が肝数値上昇への影響が大きいというのはとても興味深いですね。会社の健康診断などで、肝数値が高い結果が出ると困るということであれば、健康診断の数日前からナイアシンの服用をいったん中止すればいいでしょう。そうすれば数字はすぐに正常化するはずです。