糖質制限はベストアンサー?

本記事は神戸ナカムラクリニック中村篤史院長から許諾いただき、「院長ブログ」に掲載された「糖質制限」を再編集したものです。

ダイエットにおける糖質制限の正しい認識

糖質制限はオーソモレキュラー栄養療法でも重要なテーマの一つではないでしょうか。もちろん、その本質は現代人に足りていなタンパク質の摂取を増やすために過剰に摂取している糖質量を見直すということなのですが、”糖質制限”が昨今ダイエットのメインストリームになりつつある中で全体を俯瞰してみるのは必要なことだと感じています。

精製糖質(砂糖、白米、パン、麺類、いわゆる”白い食べ物”です)が体に良いかどうかということはもはや議論にはならないでしょう。しかし、精製糖質を含むより広いカテゴリーの「糖質」全般(食物繊維を含む炭水化物という考え方ですね)についてはどうでしょうか。

ここは、議論の余地があると思います。つきつめると、米やパンなどの主食を食べるべきかやめるべきかという話になってくるので、これは非常に大きなテーマです。

「糖質制限のおかげで健康になった」という人が確かにいる一方で、批判の声もあります。

たとえばこんな論文。

『炭水化物制限食はマウスの肌の老化を促進する』

本研究は老化加速傾向マウス(SAMP8)を用いて炭水化物制限食の加齢および皮膚の老化に対する影響を調べ、長期間の炭水化物制限が老化プロセスにどのような影響を与えるのかを究明することが目的である。

3週齢のオスのSAMP8マウスを1週間事前の餌を与えた後、3つのグループに分けた。第1群にはコントロール群としての食事、第2群には高脂肪食、第3群には炭水化物制限食を与えた。マウスが50週齢に達するまで、不断給餌とした。実験期間終了前に、評価テストを用いてマウスの可視的老化を評価した。実験期間終了後、マウスの血清および皮膚の標本を作成し、分析にかけた。結果、評価テストにおいて可視的老化は炭水化物制限食群で有意に進行しており、生存率も低かった。

皮膚の組織学的検査によると、炭水化物制限食群では上皮および真皮が他の群より菲薄化していた。この現象のメカニズムとしては、血中インターロイキン6の増加、肌老化の増悪、皮膚自食の抑制、皮膚mTORの活性化があることが示された。つまり本研究は、炭水化物制限食が老化加速傾向マウスの皮膚の老化を促進することを証明するものである。

上記研究者の考察です。

研究者の考察

「糖質摂取を減らすとタンパク質や脂質の割合が増えます。摂取したタンパク質はアミノ酸に分解され筋肉などに再合成されますが、実は一定の割合で、いわば『不良品のタンパク質』ができており、その蓄積が老化を促進しています。若いうちは筋肉の代謝が盛んで不良品が出にくく、それを分解するオートファジー(自食)能力も高いが、加齢につれて不良品が増え分解能力も落ちてしまいます。

特にアミノ酸の摂取が多いと、オートファジーが抑制され不良品のタンパク質がたまりやすいことがわかっています。我々はこのメカニズムは人間にも当てはまるのではないかと考えています。糖質制限の効用を全否定するわけではないですが、高齢になると血糖値が高いことよりも低栄養のほうが問題になります。壮年期は肥満や糖尿病予防のために糖質制限に一定のメリットがあるでしょうが、高齢者はむしろ炭水化物をたくさん摂ったほうがいいのではないでしょうか。」

センテナリアン(百歳越えの老人)の研究や沖縄の長寿者の研究でも、炭水化物摂取量と長寿の相関関係が指摘されています。中村先生は、患者さんを診ていても、糖質制限を始めたことで体調の改善は自覚しつつも、同時に肌が荒れたり髪がパサつくようになったりした人は確かに多いように思うそうです。

炭水化物制限による肌荒れの原因

炭水化物制限によって、なぜ肌が荒れるのでしょうか。
上記の研究とは全く別の視点、「腸内細菌が絡んでいるのではないか」と示唆する論文も多いです。

糖質制限をしたことがある人は、おならや体臭がきつくなった経験があるかもしれません。これは炭水化物を好む腸内細菌叢(いわゆる善玉菌)の減少に加えて、タンパク質摂取の増加に伴ってある種の菌叢(いわゆる悪玉菌)が増加したことによるものです。糖質の摂取を減らし、タンパク質の摂取を励行(普通に肉、魚、卵を食べるだけでなく、プロテインまで勧めて)することが、果たして患者さんに利益のあることなのか、上記の論文は、近年流行の食事法に疑問を呈する内容になっています。

編集者の見解
編集者も、長らく腸内細菌叢のバランスが悪く、本当に自分にとってのベストは何か?をいつも模索しています。毎日かなりハードに運動をするのでプロテインを30gは食事以外で摂取しますが、それと同時に食物繊維を意識して摂るようにしています。炭水化物には豊富な食物繊維が含まれていますから、糖質を制限して体質が改善した後は適量の炭水化物を摂取することで腸内の状態も良化しているように感じられます。今回の記事のテーマでも触れているように、精製糖質=炭水化物という図式ではないですから一つ一つ実験や研究の本質を理解する必要があると感じています。

日本人に適した正しい糖質制限とは?

で、結局どうすればいいの?
最近はやりの低糖質高タンパク質食を勧める食事法は間違いで、従来の日本人の食事、つまり高糖質低タンパク質食がやっぱり正しいってことですか?

中村先生は、自分の直接見聞きした症例、目にした文献、つまりファクトの断片を、こうしてブログでみなさんに供覧し、知識を共有しているだけで、何か結論めいたことを押し付けることは基本的に控えていらっしゃいます。そして、一般的な注意としては、マウスで観察された事象が人間にもそのまま当てはまるかどうかは疑問ですし、人間の個体差というものも考慮すべきだと指摘されています。

たとえば、病気の背景にグルテン不耐症が隠れている方は多いと思います。そういう方が、一念発起して糖質制限食を開始したとします。体調はきっと改善するでしょう。しかし、この方の場合、実は糖質全般を抜く必要はなかったはずです。小麦(パン、麺類)を抜けば十分で、米は食べていても大丈夫だったという可能性があります。もっと言えば、近年の品種改良(遺伝子組み換えも含め)が進んだ小麦が体に合わないのであって、昔のヨーロッパ人が食べていたような黒パン(ふすまなどが混ざった)なら食べても大丈夫という可能性もあります。

万人に通じる絶対の食事法というのがあれば楽なのですが、残念ながらそういうのはなさそうです。オーソモレキュラー栄養療法的に考えると”少食”と”ビタミンC”はけっこういい線だと思っています。

編集者の見解
編集者自身は、糖質制限によって体質が改善できた事例に入ります。ただ、制限という単語を使うと何かを極端に減らすというイメージになってしまいます。そのため、こうした糖質は善か悪かの二元論に陥るのではないでしょうか。ですから、私たちは制限という単語は使わず、”適量糖質高タンパク質食”と呼ぶようにしています。現代人は、日々の活動消費カロリーに対し、摂取カロリーは明らかに過剰になっているのは間違いないでしょう。人類史上、これほどまで短期間に肥満人口が(肥満は20億人超と言われ世界の全人口の1/4以上)増えたことはありません。また、肥満が大問題となっている前代未聞の種族に成り果てた原因は、精製糖質(脂肪を溜め込む最高の物質)の過剰摂取と、抗生物質の乱用による腸内細菌叢のバランス崩壊とも言われています。(これは、多くのエビデンスが存在する中で、いまだに世界の科学界や医学界において統一見解になっている説ではありません。)

UROOMが考える糖質制限

私たちのサロンでは、「筋拘縮」を解除することで、様々な疼痛の改善につながる筋肉チューニング整体術という手技をサービス提供しています。仕事柄お客様の体の変化には敏感になるのですが、筋肉の質に着眼すると栄養摂取と疼痛には切っても切れない因果関係があることに気づきます。

  • 糖質過多で相対的にタンパク質摂取が少ない方
  • 日々の運動時間が少なく、摂取カロリー過多で肥満気味の方
  • 野菜が嫌いで食物繊維や微量栄養素の摂取が少ない方
  • 甘いものが大好きで、ジュースやスイーツなど毎日精製糖質(人工甘味料を含む)を過剰に摂取している方
  • オメガ3系不飽和脂肪酸(青魚が代表的)の摂取が少なく炎症体質の方
  • 毎日アルコールを飲まれる方
  • 喫煙している方

これらの方たちは、栄養摂取に問題があり、長く慢性的な疼痛に悩まされているお客様のほんの一例です。人体に必要な栄養が行き届かないために筋肉が鉄板のように硬く縮こまってしまい毛細血管が圧迫されて血行障害を起こしてしまっています。私たちは疼痛の原因は血行障害から起きる酸欠によるものが多いと推察しています。

オーソモレキュラー栄養療法は疼痛改善にも役立つに知恵として参考にしております。施術現場で気付いた変化として、精製糖質を少し減らし、ホモ・サピエンスにとって適正量のタンパク質を摂取することで良質な筋肉を維持することができます。さらに、ビタミン・ミネラルを意識的に摂取するのも効果的ではないかと考えております。これらと同時に人間らしく運動をする。良い栄養摂取状態でも、代謝が悪ければ元の木阿弥になりかねません。

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オーソモレキュラー栄養療法で筋痛症改善を!

神戸ナカムラクリニックの中村篤史院長がUROOM調布成城にてオーソモレキュラー診療(自由診療のカウンセリング)を不定期ではありますが月に1回、10名様限定で実施いたします。筋痛症を根本から改善されたい方、筋肉の質を改善されたい方などはぜひご参加ください。



腰痛改善の鍵は高たんぱく質


筋肉のロックが原因となる腰痛、股関節痛、膝痛、五十肩などの疼痛ですが、発症した方の多くが、”質の栄養失調”に陥っています。
腰痛を改善するための体質改善にとても重要な栄養素、たんぱく質を摂取することで痛みが改善するメカニズムを詳しくご説明いたします。


ABOUTこの記事をかいた人

續池均

セブンシーズ・アンド・パートナーズ株式会社代表取締役  大学卒業後、食品メーカーに7年勤務し、ITベンチャー企業へ転職。2005年12月に事業管掌役員として東京証券取引所マザーズ市場に上場を果たす。その後、独立起業し現在に至る。 四児の父として育児に奔走しつつ、自らの體の再生に光を当ててくれた整体に興味を抱き2016年に「ミオンパシーサロンUROOM」を開業。5年の整体院経営で培った理論と実践からMTR Method™️を開発。「筋肉チューニング整体院UROOM」へ昇華改名し、オーソモレキュラー栄養療法に基づく栄養ストラテジーを実践する健康食品ブランド「医食同源Lab」の開発など人體研究者として邁進している。