私たちが体を動かすことができるのは何故なのか、考えてみたことはありますか?
体の動きは筋肉の収縮によって生み出されます。
神経系が信号を送り、筋肉が収縮して骨格を動かすことで体が動くのです。
体を動かすことで、体内の血液や酸素・栄養素が循環し、体温が保たれ、代謝が促進されます。
この代謝が行われる過程では様々な栄養素が必要になりますが、主にビタミンB群 は非常に多く使われる栄養素です。
ビタミンB群は助け合って働く
ビタミンB群はどれかひとつだけでは効果を発揮しにくく、それぞれ異なる働きがありお互い助け合いながら働きます。ゆえにビタミンB群は一緒に摂る(複合体)のが望ましいかたちです。
◯ビタミンB1(チアミン)
:炭水化物(糖質)をエネルギーに変える際に必要とされるため、エネルギー代謝をサポートします。
◯ ビタミンB2(リボフラビン)
:エネルギー代謝を助けるほか、赤血球形成や皮膚の健康維持に重要な役割を果たします。
◯ビタミンB3(ナイアシン)
:脂質代謝や糖質代謝をサポートし、細胞のエネルギー生産に関与します。
◯ビタミンB5(パントテン酸)
:コエンザイムAの構成要素であり、糖質、脂質、タンパク質の代謝に必要です。
◯ビタミンB6(ピリドキシン)
:たんぱく質代謝、赤血球の形成、神経伝達物質の合成に関与し、免疫系の正常な機能をサポートします。
◯ビタミンB7(ビオチン)
:炭水化物や脂質、タンパク質の代謝に重要であり、健康な皮膚や髪、爪の維持に役立ちます。
◯ビタミンB9(葉酸)
:細胞分裂やDNA合成に必要。妊娠初期の神経管閉鎖障害予防や赤血球形成に重要です。
◯ビタミンB12(コバラミン)
:赤血球の形成や神経系の正常な機能維持に重要。ビタミンB9と連携して働きます。
この働きから「エネルギー代謝」にビタミンB群が大きく関わっていることがわかります。
ビタミンB群はエネルギー代謝や細胞の正常な機能に必要不可欠な栄養素であり、バランス良く摂取することが健康維持のために重要です。
特にビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン)はエネルギー代謝に深く関わります。
基礎代謝とは?
代謝は「基礎代謝」「活動代謝」「食事誘導性熱代謝」の3種類あります。
この中で最もエネルギーを必要とするのが「基礎代謝」です。
基礎代謝は私たちが生きる為に無意識に行っている呼吸や体温維持などに使われるエネルギーです。つまり、寝ているだけの状態でも人は多くのエネルギーを使っているのです。基礎代謝とは、正確には「基礎代謝量」といい、成長期の身体の発育のために多くのエネルギーを必要とする10代前半をピークに徐々に下がって行きます。
基礎代謝量は代謝が活発な細胞や筋細胞が体内に多いほど大きくなります。エネルギー消費量の多い臓器は脳、肝臓、筋肉、腎臓などです。寝ているだけなのに筋肉も多く使うの?と思われがちですが、心臓の拍動や肺呼吸にも絶えずエネルギーを消費しています。
また、筋肉が緩むためのエネルギーでもあるのでエネルギー不足が起きていると緩めた筋肉が元の硬い状態に戻りやすいということが起きてしまいます。
体内で行われる活動全てに代謝が関わっており、私たちの体は代謝なくして成り立たたないということがわかりますね。
「エネルギー代謝」は細胞内のミトコンドリアで行われています。
ミトコンドリアには細胞内のエネルギー(ATP)産生工場の役割があり、多くの代謝反応が行われます。
有機物(糖質、脂質、たんぱく質)が細胞内で代謝され、酵素によって分解されてエネルギーが生成されます。新陳代謝や細胞成分の合成といった細胞の成長・修復・機能維持に必要なプロセスも代謝によって調節されます。
【たんぱく質の代謝】
たんぱく質(アミノ酸)をエネルギーにするために特に必要なのがビタミンB6(ピリドキシン)です。たんぱく質はエネルギーになる他にも細胞や皮膚、髪、骨、筋肉の材料になるので、ビタミンB6が不足しているとこれらの良い変化が感じずらいかもしれません。たんぱく質を有効活用するためにはビタミンB6が必要です。
【糖質の代謝】
糖質(グルコース)をエネルギーにするために特に必要なのがビタミンB1(チアミン)です。
糖質過多でビタミンB1が不足すると疲労、だるさ、食欲不振などの症状が現れます。
甘い物やアルコール、麺類など小麦製品の摂取が多い方はエネルギー不足を起こしているので、体は手っ取り早い糖質のエネルギーを欲しがる傾向にあります。
その分ビタミンB1の消費も多いため負のループに陥ってしまいますので、たんぱく質・脂質のエネルギーも上手に取り入れていきましょう。
また体が酸欠の状態にあると乳酸が蓄積しやすいため、これをエネルギーにするためにナイアシン(ビタミンB3)が必要になります。
【脂質の代謝】
脂質(中性脂肪)をエネルギーにするために特に必要なのがビタミンB2です。
中性脂肪は悪いというイメージがありますが、体を動かすエネルギー源であり、体温を一定に保つ役割があります。またコレステロールも細胞膜やホルモン、胆汁酸の材料になるので良質な脂質を積極的に摂っていきたいです。
脂質の多い食事をするときはビタミンB2も一緒に摂ると効率よく脂質をエネルギーにすることができます。
エネルギー代謝はミトコンドリアのTCA回路(エネルギーをつくり出す過程にある回路)で行われています。
糖質や脂質が分解されてピルビン酸からさらに補酵素のコエンザイムA(CoA)→アセチルCoAに変化します。このアセチルCoAの補酵素となるのがビタミンB5(パントテン酸)です。TCA回路での代謝がうまく回転するためにはアセチルCoAの前駆体であるビタミンB5が必要です。
ビタミンB5はギリシャ語で「広くどこにでもある」と意味があり色々な食品に含まれていますのでバランスよく食べていれば不足しずらい栄養素でもあります。
TCA回路とは
TCA回路は、生物学的な代謝経路の1つで、細胞内のミトコンドリアに存在する重要な代謝経路です。
TCA回路は、たんぱく質、糖質、脂質などの栄養素が細胞内で代謝される際に中心的な役割を果たします。
ここでは、アセチルCoAと呼ばれる中間体がクエン酸という化合物に変換され、その後、酸化的脱炭酸反応を通じて二酸化炭素とATPに変換される過程が含まれます。この回路における反応は酵素によって触媒され、NADHやFADH2といった電子伝達体も生成されます。
TCA回路は、代謝経路において重要な位置を占めており、ATPの生成、NADHやFADH2の産生、栄養素の酸化、電子伝達などに関与しています。この回路は、生物の生存に不可欠なエネルギー生産のプロセスを支えています。
このTCA回路ではナイアシンが多く使われています。
生体のエネルギー通貨『ATP(アデノシン三リン酸)』
細胞内のミトコンドリアにあるTCA回路ではATP(アデノシン三リン酸)が作られます。ATPは私たちが生きていく上で必要なエネルギーです。体を動かす、心臓を動かす、筋肉の収縮、胃腸を動かす、呼吸をする、代謝をおこなうなど全てATPをエネルギーにしています。ATPは細胞内に貯めておくことができないため、常に生成と分解を繰り返しながら均衡を保つ特徴があります。
そのため、ATP産生を活性化させるためにビタミンB群の他にマグネシウムや鉄などのミネラルも必要になります。
このようにして人の体内では様々な栄養素で生きるためのエネルギーを作りだしています。
特にビタミンB群は複合的でそれぞれが助け合って働くビタミンですが、どれひとつ欠けることなく摂っていくことが大切です。
もし慢性的に体の痛みや不調が長引いている場合、食事からの栄養だけでは補えていない可能性があるので、迷わずサプリメントで補っていくことをお勧めします。
ビタミンB群に限らず全ての栄養素に言えることですが、栄養の使われ方には個体差があります。普段の食事で自分には何が足りていて何が不足しやすいのか?何を摂りすぎると調子が悪くなるのか?など、自分の傾向を知っておくことがとても大切なのではないでしょうか。
調子が悪いな、疲れがとれないな…
など不調があった時のために、エネルギー代謝に関わるビタミンB1(チアミン)、B2、B3(ナイアシン)、ビタミンB5(パントテン酸)、B6の働きを覚えておくと改善のヒントになります。またビタミンBコンプレックスのサプリメントを常備しておくことも忘れずに!