砂糖の本当の怖さと解決策
「甘いものは苦手なので、一切食べません」という患者さんを中村先生は見たことがないそうです。糖質制限が世に広まり始めていますが、糖質の中でもとくに過剰摂取によって体の調子を崩す原因となる砂糖中毒の患者さんが本当に多いようです。
極端な話、もしこの世の中から砂糖がなくなれば95%の病気は消滅するのではないかと思えるほど、その悪影響ははかりしれません。
オーソモレキュラー栄養療法は「ビタミンで治す」が基本スタイルですが、患者さんが自宅でお菓子をドカ食いしていたら、根本治癒は本当に難しくなります。一度、その魅力にはまってしまうと、なかかなやめることができないというのが砂糖の本当の怖さです。
お酒やタバコは法的に年齢制限が定まっています。しかし、砂糖は誰がどれだけ食べようが全て合法です。テレビでは、お菓子や清涼飲料のCMがあふれ、視聴者は甘いものがどこでもすぐ手届くところにあるのを知っています。
人々は、「甘いものは脳の唯一の栄養」などという、それこそ甘言に乗っかり、日々お菓子を食べつづけています。それは虫歯になって痛い目にあってもかわりません。さすがに、この異常な現象に気づく人は増えているのかもしれません。
そう、砂糖は麻薬なのです。
これは決して比喩でも何でもありません。砂糖摂取によりドーパミンが大量に分泌されます。この報酬系ホルモンが刺激され気分が高まります。砂糖をひとつの物質としてみた場合、作用機序としては麻薬そのものなのです。合法ドラックが問題となっていますが、砂糖もその影響力は大差ないのです。
「百歩譲って、自分は砂糖中毒と認めるよ。でも、本当に食べてはいけないのは精製糖質でしょ?未精製の黒砂糖、はちみつ、メープルシロップはどうなの?」
白砂糖よりは幾分ましというだけで、本質はかわりません。摂取しないにこしたことはありません。
でも、「ただひたすら我慢する」というのも合理的ではないので、オーソモレキュラー栄養療法らしいアドバイスをさしあげます。本気で砂糖をやめたいと思っているなら、サプリメントがその意志をサポートします
まずは、ビタミンB群(とくにナイアシン:ビタミンB3)とミネラルならマグネシウム、亜鉛、クロムなどです。
今回は、ナイアシンについて紹介しましょう。
依存症にも有効なナイアシン
ホッファーは、ナイアシンがアルコール依存症の患者に著効し、彼らの飲酒欲求の軽減に有効であるということを発見しました。そして、たくさんアルコール依存症患者を社会復帰させてきました。ナイアシンは脳の報酬系に作用し、依存症の欲求を抑える働きがあるのです。
ソール先生がこんな症例(30代女性)を報告しています。
「専業主婦をしています。数ヶ月前から徐々に酒量が増えてはじめ、お酒がないと落ち着かなくなりました。夫や子供がいなくなってからが、私の時間です。キッチのテーブルに座ってずっと飲みつづけます。ウィスキーのボトルを一人で1本あけてしまうことなどざらにありました。我ながら異常だと思いました。もうやめよう。何度もそう思ってもやめられないのです。
午後四時くらいに子どもが帰ってくるので、お酒の時間は終わりです。気を取り直して家事にとりかかります。
一家での夕食時に晩酌をすることはあります。夫と子どもの手間なのでほんの少しです。日中はその何十倍も飲んでいるのに、家族の前では自分をうまく偽っていました。
あるとき、息子が私の誕生日に素敵なウィスキーをプレゼントしてくれました。「ママ、お酒好きだよね。だからどうぞ」って言いながら箱入りのウィスキーをくれたのです。これは息子から大切な気持ち。大切にいただこうと思っていました。
でも、その翌日、夫と子どもがいなくなってから、「どんな味かしら?」とふっと気になって一口飲んでしまいました。その一口が呼び水になり気がついたらボトルが空になっていました。
私は病気だ。
悔しいやら情けないやらで涙がこぼれました。それでも、泣きながらまた飲んでいるのです。
これでは本当に自分が壊れてしまうと思い、インターネットで調べました。「アルコール依存症にはナイアシンが有効」という記事を見つけました。そして、すぐにナイアシンを試しました。
そうしたら、本当に効いたのです!あんなに飲みたくて飲みたくて仕方なかったお酒への欲求が不思議となくなったのです。
私にナイアシンを教しえてくれたソール先生のDoctor yourselfにはとても感謝しています。
もし、ナイアシンに出会えなかったら今頃どうなってしまっていたのでしょう。」
“Orthomolecular Medicine for Everyone”には、「アルコールは砂糖の液体状代替物であり、アルコール依存症の背景には幼少期の砂糖依存がある」という記述があります。たしかに、アルコールは穀物を発酵させた液体であり、つまり穀物は糖質だから、相関関係は明らかですね。
上記のような、アルコール依存症にナイアシンが効いたというようなエピソードは枚挙に暇がありません。科学的エビデンスもはっきりしています。ナイアシンアミド投与群とプラセボ投与群で飲酒再開率に明確な有意差が出ています。(ナイアシンではなく、ナイアシンアミドが用いられたのは、ナイアシンのホットフラッシュによって実薬とプラセボの比較対照ができなくなるためです。)
明らかなエビデンスがあるのに、アルコール依存症の標準治療にナイアシンはいまだに採用されていません。
以前、中村先生が勤務していた病院はアルコール依存症治療に力を入れていました。担当の先生にナイアシンがいかに有効かを解説したようなのですが、見事にスルーされてしまったようです苦笑
さらに付け加えると、ナイアシンは砂糖とアルコールだけではなく、依存症全般に効果があります。ベンゾジアゼピン系睡眠薬や抗不安薬の後遺症に苦しんでる方は、ナイアシンとアスコルビン酸(ビタミンC)を併用すると減薬の助けになると思います。