肥満について、解決へのアプローチ方法はたくさんあります。中村先生がその中でも真っ先にお勧めしているのが糖質制限です。
糖質依存を克服するためのアプローチ
「甘いものはダメですよ」と言ったところで、「はい、そうですか。わかりました」という患者さんはそれほど多くないでしょうね。以前もブログで触れましたが「わかっちゃいるけどやめられない」というのが糖質の本当の怖さです。そこで、糖質依存を克服するためのアプローチ方法をいくつかご紹介しましょう。
- 甘いものは脳のドーパミンの分泌を促し強い快感をもたらす。これが糖質中毒の核心だから、ナイアシン(ビタミンB3)というゆるやかなドーパミン刺激作用のあるビタミンを摂取するのは一つの手です。
- また、糖質過剰摂取の人は、エネルギー代謝が解糖系サイクルが優位になっていて、ミトコンドリア内で行われている電子伝達系があまり機能していないことに注目するなら、ミトコンドリアを活性化させるビタミン、ミネラルの摂取も効果があるはずです。
- そして、腸内のカンジダがある種の神経因子を分泌した結果、それが迷走神経経由で脳に届いて宿主の糖質摂取行動を促進するという機序に注目するなら腸内環境の改善に取り組むのも良いと思います。
アダプトゲンである”ロディオラ”の効用については前回このブログで書きましたが、実は肥満にも有効だと考えています。
Rhodiola rosea: From the Adaptogenic Role to the Anti-Adipogenic Effect?
: Endocrinology & Metabolic Syndrome
肥満の人は、血中ビタミンD濃度が低く、一方で副甲状腺ホルモンの濃度が高い傾向があります。
ビタミンD濃度が低いことが肥満による結果なのか、それが肥満の原因なのか、因果関係ははっきりしていませんが、日光浴を兼ねた適度な散歩やビタミンDの摂取は何らかの助けになると考えています。
Decreased bioavailability of vitamin D in obesity
:The American Journal of Clinical Nutrition
すべての肥満の人が痩せるべきか?
しかし、そもそも論ですが、肥満の人みんなが痩せるべき、ということはないと思います。痩せか肥満かを識別するBMI(体格指数)という指標があるのをご存知かと思います。
上記の計算式で値が25以上なら肥満ということになっています。ただ、本当にこれは一つの目安にすぎません。常識的に考えてみればわかると思いますが、BMIが25以上であっても相撲取りみたいに筋肉質で体脂肪率の低い体格もあれば、甲状腺機能低下症で脂肪というか水分がたまっているような太り方もあります。
ただ、「甘いものばかり食べて、ろくに運動もしない」人のBMI25以上は、遠慮なく糖質制限に取り組んでいただきたい。
“醜形恐怖”、”ボディイメージの歪み”、というのは、体よりは心の問題なのだと思いました。ここで彼女の要望通りに食欲を抑制する処方をしては、患者さんのためにならないのは火を見るよりも明らかなので、まず、話を聞くことにしました。
精神的ストレスも肥満の原因に
職場や学校での人間関係によるストレス過多や親子関係のトラウマなど内面に何らかの問題があるケースが多いようです。人生には、幼少期、思春期、青年期などの各ステージでこなすべき課題があります。その課題を先送りのまま次のステージに進んでしまうと思わぬ形で足をすくわれることがあります。摂食障害もその現れの一つだという説があるのです。だとすれば摂食障害の根本的治療というのは、なかなかハードな作業になると感じています。医師は患者さんの内面深くに降りていき、問題点を見つけます。そして、その解決策を見つけないといけない。それがもし親からの虐待という容易に癒しがたい傷であったならどうなるのか。
一人の医師が解決するにはあまりにも問題が大きすぎ、無力感のなかで途方に暮れることも多いという中村先生は、それでもオーソモレキュラー栄養療法の可能性にかけます。またしてもナイアシン(ビタミンB3)です。
アメリカでは、戦場でのストレスに起因するPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩む退役軍人が多いそうです。そうした症例にはナイアシンが著効するというのがホッファー先生の主張です。いわゆる「心の傷カウンセリング」などを通して意識改革するしか治る方法がないとされている症状が、単純なビタミンの投与で治るというのはにわかには信じがたいでしょう。しかし、多くの戦争帰還兵がナイアシンによって救われたのは紛れもない事実です。おまじない以上の効果はあるはずなので一度試してみる価値はあると思います。